私の両親は、それまで2人暮らしを続けていました。
母は「遠位型ミオパチー」という難病で、
家の中ではすでに電動車椅子が必須。
トイレだけはなんとか自力でできていましたが、
ベッドでの起き上がり、車椅子の乗降は1人では無理で、
父が留守の時は、私と妹が交代で介助していました。
私の家は車で3分ほど、妹は徒歩3分ほどの距離。
なんとかサポートしながら在宅生活を続けていましたが、
兄弟の中では「いつか母も施設入所になるだろう」という考えは、
事故の前から、常に頭の片隅にありました。
ただ、その“いつか”がいつなのかまでは決められず過ごす日々──
少しずつ、父の変化が目立ち始めます。
・スマホやPCの操作がわからなくなる時がある
・ゴミの分別を間違える
・買い物の内容がずれてくる
高齢によるものか、認知症なのか判断がつかないまま
様子を見ていたタイミングで、転機となる出来事が起きました。
母をリハビリの病院に車で送る途中、父が交通事故を起こしたのです。
「病院の送迎は介護タクシーを利用したら?」と
私が、両親に提案した数日後の事故でした。
父に怪我はなかったものの、母は腕を骨折して入院。
その後、念のため父も検査を受けたところ、
「認知症」と診断されました。
母の骨折が治ったとしても、
父がこれまでのように支えるのは現実的に無理。
2人で再び自宅で暮らすのは危険だと判断し、
「退院後そのまま施設に入るほうがいいよね」と兄弟で話がまとまりました。
母本人に伝えたのは、
退院後の生活について話し合う病院での会議の場。
主治医、退院サポートのスタッフさん、
看護師さん、母、私と妹の6人で集まり、
その場で初めて本人に説明しました。
ショックはあったと思いますが、
父の状態や今後の生活の現実を伝えると、
最終的には受け止めてくれました。
入院先の退院支援のスタッフさんがとても親切で、
「私の方でも、お母さんに合いそうな施設をいくつか探しておきますね」
と声をかけてくださり、心強かったのを覚えています。
私と妹も並行して、ネットで施設を探すことに…
気づけば、あれよあれよと、施設探しが始まっていました。